2015年11月27日金曜日

11月26日 控訴審第2回公判 証人尋問

午後1時30分、控訴審の第二回公判が名古屋高裁第1号法廷であった。木口信之裁判官が退官し、裁判長が村山浩昭裁判官に交代する中で開廷した。

この日は贈賄供述の経過についてNの取調べを担当した愛知県警の中村道成警部補の証人尋問を行った。

主な尋問事項は、平成26(2014)年3月15日から4月中旬にかけての取調べで、(1)Nが初めて贈賄を自白した経緯、(2)平成25(2013)年4月2日ガストの同席人数が2人から3人に変遷した経過とその理由、(3)同年4月25日山家で渡したという20万円の原資についてである。

尋問は、中村警部補自身が取調べ中に作成していた捜査メモを適宜示しながら行われた。捜査メモはワープロ打ちが大部分で、一部が手書きで作成されていた。

(1)3月15日の詐欺事件の取り調べで、融資詐欺以外にやってないか尋ねたところ、Nは泣き出して、藤井さんに20万円渡したことを初めて自白した。取調べ中に、家族の話になり、涙を流し始めて、贈賄を打ち明けた。その内容を3月16日と17日にNに上申書を書かせて提出させたと述べた。

反対尋問で弁護人が、別の贈賄の件を話した時のNの様子を尋ねると、ガストの10万円の件は普通に話していた、名古屋市議に300万円渡した話も、感情的にならずに簡単に話していたと答えた。どうして最初に藤井さんの話をした時だけ涙を流したのかを聞くと、Nは家族、特に娘さんのことを思って涙を流したのだと思うと答えた。

捜査の経緯については、名古屋市議の周辺を洗っていたら、Nの銀行への融資詐欺が発覚した。自分の所属する捜査2課は贈収賄と選挙違反、特殊詐欺が担当で、本来は融資詐欺は範囲外だが、大きい事件のため上司の指示で、融資詐欺の捜査を開始した。美濃加茂市長への波及を視野に入れていたわけではないと答えた。贈賄を自白する前の2月か3月に、話の中で「藤井さんはすごくいい人」とNが言ったことがあった。何のきっかけかは覚えていないと述べた。

(2)ガストの同席者について、当初の調書で「Tはいなかった」としたのは、「Tがいなかったかもしれないと思う」とNが話しており、調書は基本的に断定調で書くように指示されていたため、人数の裏付けが取れるまでは、「いなかった」と記載した。その後、店の記録で人数が3人と判明したため、再度調書を取り、変更した。変更した理由については記載しなかった。

要するにメールの内容や店の記録の方にNの供述を合わせたのでは、N自身の一審の公判の「駐車場からガストの店内に3人で向かう場面を思い出した」という証言と矛盾するのではという弁護人からの質問に対しては、メールの文面をそのままNに見せたわけではなく、あやふやな点について記憶喚起のためメールの内容を伝えながら質問して詰めていったと答えた。

ガストに持って行った資料について、「以前、華川に持って行ったのと同じ資料だったので、この時に現金10万円を資料にカモフラージュして渡したのだと思う。」というNの供述と、実際には異なっており、飲用に問題ないことを防災課に説明するためにN自身が書き込みをした資料を美濃加茂市に持って行った矛盾については、Nが大事な資料ではない、資料に紛れて現金を渡したと言うので、資料の内容についてまでは詳しく聞かなかった、現金を挟んだ資料の形状などについて聞いただけだったと答えた。

(3)4月25日朝、H・Yから50万円借りたとNが供述したことと、逆に捜査メモには借りに行った形跡がないと書かれていることに関連して、裏が取れなかったため、20万円の原資を当日銀行から90万円出金したことと辻褄合わせしようとしたのでは、という質問には、出金した90万円の使い道は聞いていた、最終的にETCの照会で4月25日夜にH・Yの自宅にNが借りに行ったことが裏付けられたが、そのことを前提にNに質問したかは覚えがないと答えた。

H・Yを詐欺の共犯で逮捕しなかったことについては、捜査の方針でしょうがなかったと述べた。

捜査メモの取り扱いについて、犯罪捜査規範で記録を残す義務があるが、破棄する場合がないとは言えない。今回は、否認していたので、メモの意味があった。録音・録画の実施については、特に指示されなかったのでしなかったと述べた。

公判準備について、一審の公判段階で出廷の可能性は聞かされていたので、休日に6、7時間打ち合わせした。捜査メモは手書きも含めて検事にすべて見せた。

途中2回の休廷を挟み、午後5時頃、証人尋問を終了した。

証人は180cm以上の長身でそこそこの体格だったが、声が小さく、全体的に歯切れが悪く、たびたび裁判長から「もう少し声を大きく。語尾まではっきりとお願いします。」と注意されていた。

詐欺事件の取調べを担当した苅谷昌子検事の証人尋問について、代わりに陳述書を提出することとし、12月11日に予定していた公判は取り消された。次回以降の期日については、弁護人、検察官、裁判所の三者協議で決定することにして閉廷した。