2015年8月25日火曜日

8月25日 控訴審第1回公判

一審無罪判決の控訴審が午後1時30分名古屋高裁で始まった。裁判長は木口信之裁判官、右陪席大村泰平裁判官、左陪席肥田薫裁判官。

まず、検察官提出の6月18日付の控訴趣意書、それを補充する8月18日付の意見書を確認した後、検察官の取調べ請求した1号から12号までの書証と証人申請の検討に入った。

書証について、弁護側は6月20日付及び7月15日付の答弁書の通り、刑事訴訟法382条の2の「やむを得ない事由」によって原審で取調べ請求することができなかった証拠にあたらないとして、不採用を求めた。

木口裁判長は弁護側に刑事訴訟法326条の同意をするか尋ねたが、郷原弁護人は不同意と述べた。捜査報告書につき、当該日時に警察官が作成したことを立証しようとする部分は供述証拠であって、検察側の非供述証拠であるとの主張は認められないと述べた。

証人尋問の請求について、弁護側は関連性がなく、予定する尋問事項も明らかでないため、不必要であると述べた。弁護人は、警察官の中村証人はすでに一審の公判前整理手続でこちら側が請求したにもかかわらず、検察が取調べを拒否したことを指摘し、却下を求めた。

木口裁判長は刑事訴訟法382条の2のやむを得ない事由ありとして、ともに警察官である中村証人及び検察官である苅谷証人の証人尋問を行うことを決定した。(8月26日訂正)

弁護人は、検察側の証明予定事項が明らかでないことに異議を述べ、裁判長が検察官になるべく早く証明予定事項を明らかにするよう促した。

裁判長が検察の刑事訴訟法328条の予備的主張につき意見を求めたが、弁護側は特にございませんと異議は述べなかった。

次回中村証人の尋問を11月26日、次々回の期日を苅谷証人の尋問12月11日に行うことを決定して30分ほどで閉廷した。

検察側は3名で1人は女性の検察官。ほとんど応答していたのは、裁判官に近い席の男性の検察官。

刑事裁判の控訴審について

控訴に関してはちょっと自分もあやふやなので、自分用に整理します。

一審、二審までが事実審。最高裁は法律審。

二審までは証人尋問や新たな証拠を出して事実を争えるが、刑事裁判の控訴審は原則として事後審。

事後審とは、訴訟記録に基づいて一審判決の当否を事後的に判断。要するに書面審査ではねるかどうか決める。問題なければ控訴棄却。不当な点があり、「やむを得ない事由」で新たな証拠を調べる必要があると判断されたときに、公判で証拠を取り調べ、その結果で控訴棄却か、原判決破棄かを判断。

わが国の控訴審は「事後審」と呼ばれ、1審の手続や事実認定に誤りがあるかどうかを判断するために、1審の記録だけを審査するのが原則である。裁判をもう一度やり直すわけではない。新聞の見出しによく「高裁も実刑」などと書いてあるのをときどき見かけるが、あれは間違いである。正しくは「高裁、一審の実刑判決を是認」ということになる。高裁では新しい証拠を取調べないのが原則であり、「やむを得ない事由によって第1審の弁論終結前に取調を請求することができなかった」場合でない限り、新しい証拠を取調べないことになっている(刑訴法382条の2、393条第1項)。(刑事裁判を考える:高野隆@ブログ)

犯罪事実がないとして一審が無罪判決だった場合、いきなり破棄自判はできず、破棄差し戻しか、新たに犯罪事実を証明する証拠を取り調べるかしないと有罪判決は出せない。

同じく一審無罪だった事件の控訴審について

ところで,この破棄自判,常に許されるかというと,判例法上の制約があります。第一審判決が犯罪事実の存在を確定せず無罪を言い渡した場合,控訴審がなんら事実の取り調べをすることなく第一審判決を破棄し,訴訟記録及び第一審にて取り調べられた証拠のみによって直ちに犯罪事実の存在を確定し有罪の判決をすることはできないという趣旨の最高裁判例があります。 
さて,以上を小沢氏のケースに当てはめてみますと,以下のようになるかと思います。小沢氏の裁判では,虚偽記入の違法性を認識していなかったことが無罪判決の理由と報じられています。これが,事実認定の問題なのか,法律判断なのか,正直言ってよくわからない面がありますが,仮に事実認定の問題だとした場合,次のようになるかと思います。 
仮に,控訴審が,第一審判決を妥当だと判断した場合(小沢氏無罪だと判断した場合)は,控訴棄却。 
仮に,控訴審が,第一審判決を不当だと判断した場合(小沢氏有罪だと判断した場合)は,控訴審で事実の取り調べをしていないことから,破棄自判の有罪判決を下すことはできず,破棄差し戻しで,審理が東京地裁に差し戻される。(千代田区麹町 やまと法律会計事務所 Blog)

 下は有斐閣の『判例六法』に掲載されていた判例
第一審が収賄罪につき犯罪の証明がないとして無罪を言い渡した場合に、控訴審が右判決を破棄し、被告人の職務権限について事実の取り調べをしただけで、事件の核心をなす金員の授受自体について何ら事実の取り調べを行うことなく、訴訟記録及び第一審で取り調べた証拠のみによって犯罪事実の存在を確定し有罪判決をすることは刑事訴訟法400条ただし書きに違反する。(最判昭和34年5月22日刑集13巻5号773頁)
要するに、今日の名古屋高裁の第1回公判で結審したら、控訴棄却が確実。次回期日に取り調べます、となったら、わからない、ということです。

この事件の一審の名古屋地裁では、ほとんど唯一の有罪方向での証拠となる供述をしたNの証人尋問を10月1日と2日連続で実施、さらに信用性を吟味するため、Oと対質で再尋問。このため、2014年内に判決の予定が今年3月に延期。ほかに、検察側の要求で10月8日、10月16日にNの知人などを計3人取り調べ。高裁でまたN関連の証人請求をしようにも「やむを得ない事由によって第1審の弁論終結前に取調を請求することができなかった場合」といえるかは難しいのではないかと素人的には思います。

控訴を認めて破棄した率は1割弱。三省堂の『デイリー六法』の巻末にも司法統計のデータが載ってるので確認。

ところで、最近、控訴審の事後審化が広く指摘されており、統計上も顕著です。司法統計によれば、平成15年の全国の控訴事件8875件(被告人側8711件、検察官側214件)のうち、第一審判決が破棄されたのは1310件(14.8%)ありましたが、平成25年の全国の控訴事件6108件(被告人側6038件、検察官88件)のうち、第一審判決が破棄されたのは569件(9.3%)にとどまりました。第2ラウンドに進むことができる続審より、第1ラウンドが誤っている場合にだけこれを是正するという事後審のほうが、通常、破棄率は低くなるものと考えられます。控訴審に関する刑事訴訟法の条文は大きく改正されていないので、変わったのは運用ということになります。(弁護士法人鬼頭・竹内法律事務所)