2015年8月25日火曜日

刑事裁判の控訴審について

控訴に関してはちょっと自分もあやふやなので、自分用に整理します。

一審、二審までが事実審。最高裁は法律審。

二審までは証人尋問や新たな証拠を出して事実を争えるが、刑事裁判の控訴審は原則として事後審。

事後審とは、訴訟記録に基づいて一審判決の当否を事後的に判断。要するに書面審査ではねるかどうか決める。問題なければ控訴棄却。不当な点があり、「やむを得ない事由」で新たな証拠を調べる必要があると判断されたときに、公判で証拠を取り調べ、その結果で控訴棄却か、原判決破棄かを判断。

わが国の控訴審は「事後審」と呼ばれ、1審の手続や事実認定に誤りがあるかどうかを判断するために、1審の記録だけを審査するのが原則である。裁判をもう一度やり直すわけではない。新聞の見出しによく「高裁も実刑」などと書いてあるのをときどき見かけるが、あれは間違いである。正しくは「高裁、一審の実刑判決を是認」ということになる。高裁では新しい証拠を取調べないのが原則であり、「やむを得ない事由によって第1審の弁論終結前に取調を請求することができなかった」場合でない限り、新しい証拠を取調べないことになっている(刑訴法382条の2、393条第1項)。(刑事裁判を考える:高野隆@ブログ)

犯罪事実がないとして一審が無罪判決だった場合、いきなり破棄自判はできず、破棄差し戻しか、新たに犯罪事実を証明する証拠を取り調べるかしないと有罪判決は出せない。

同じく一審無罪だった事件の控訴審について

ところで,この破棄自判,常に許されるかというと,判例法上の制約があります。第一審判決が犯罪事実の存在を確定せず無罪を言い渡した場合,控訴審がなんら事実の取り調べをすることなく第一審判決を破棄し,訴訟記録及び第一審にて取り調べられた証拠のみによって直ちに犯罪事実の存在を確定し有罪の判決をすることはできないという趣旨の最高裁判例があります。 
さて,以上を小沢氏のケースに当てはめてみますと,以下のようになるかと思います。小沢氏の裁判では,虚偽記入の違法性を認識していなかったことが無罪判決の理由と報じられています。これが,事実認定の問題なのか,法律判断なのか,正直言ってよくわからない面がありますが,仮に事実認定の問題だとした場合,次のようになるかと思います。 
仮に,控訴審が,第一審判決を妥当だと判断した場合(小沢氏無罪だと判断した場合)は,控訴棄却。 
仮に,控訴審が,第一審判決を不当だと判断した場合(小沢氏有罪だと判断した場合)は,控訴審で事実の取り調べをしていないことから,破棄自判の有罪判決を下すことはできず,破棄差し戻しで,審理が東京地裁に差し戻される。(千代田区麹町 やまと法律会計事務所 Blog)

 下は有斐閣の『判例六法』に掲載されていた判例
第一審が収賄罪につき犯罪の証明がないとして無罪を言い渡した場合に、控訴審が右判決を破棄し、被告人の職務権限について事実の取り調べをしただけで、事件の核心をなす金員の授受自体について何ら事実の取り調べを行うことなく、訴訟記録及び第一審で取り調べた証拠のみによって犯罪事実の存在を確定し有罪判決をすることは刑事訴訟法400条ただし書きに違反する。(最判昭和34年5月22日刑集13巻5号773頁)
要するに、今日の名古屋高裁の第1回公判で結審したら、控訴棄却が確実。次回期日に取り調べます、となったら、わからない、ということです。

この事件の一審の名古屋地裁では、ほとんど唯一の有罪方向での証拠となる供述をしたNの証人尋問を10月1日と2日連続で実施、さらに信用性を吟味するため、Oと対質で再尋問。このため、2014年内に判決の予定が今年3月に延期。ほかに、検察側の要求で10月8日、10月16日にNの知人などを計3人取り調べ。高裁でまたN関連の証人請求をしようにも「やむを得ない事由によって第1審の弁論終結前に取調を請求することができなかった場合」といえるかは難しいのではないかと素人的には思います。

控訴を認めて破棄した率は1割弱。三省堂の『デイリー六法』の巻末にも司法統計のデータが載ってるので確認。

ところで、最近、控訴審の事後審化が広く指摘されており、統計上も顕著です。司法統計によれば、平成15年の全国の控訴事件8875件(被告人側8711件、検察官側214件)のうち、第一審判決が破棄されたのは1310件(14.8%)ありましたが、平成25年の全国の控訴事件6108件(被告人側6038件、検察官88件)のうち、第一審判決が破棄されたのは569件(9.3%)にとどまりました。第2ラウンドに進むことができる続審より、第1ラウンドが誤っている場合にだけこれを是正するという事後審のほうが、通常、破棄率は低くなるものと考えられます。控訴審に関する刑事訴訟法の条文は大きく改正されていないので、変わったのは運用ということになります。(弁護士法人鬼頭・竹内法律事務所)


0 件のコメント:

コメントを投稿