2014年10月11日土曜日

10月2日 第3回公判 証人尋問 弁護側反対尋問(1)

10月2日、前日に続き、贈賄者とされるN証人の反対尋問です。長いので午前と午後に分けました。

・弁護側反対尋問(午前)

主任弁護人郷原弁護士「昨日はよく眠れましたか?」
N「あまり眠れませんでした。」
郷原弁護士「いま拘置所は独居房?」
N「はい。」
郷原弁護士「昨日、証言の最後、涙を流されてましたね。今どういう心境ですか?」
N「藤井さんには感謝しています。マスコミのこと、刑事さんに社会復帰するよう言われたこと。娘には離婚のこともあり、これ以上迷惑かけたくないと。」

郷原弁護士「あなたは詐欺で訴追されていますが、全体的にどれだけの罪になると考えていますか?詐欺と認めたもののうちで。」
関内検事「異議。どれだけとは件数ですか?」
N「数億円はいってると思います。」
郷原弁護士「金融機関から借りたもののうち詐欺じゃない融資は?」
N「詐欺でないものはないと思います。」
郷原弁護士「警察に借入一覧表を見せられましたね。」
神谷弁護士「弁49号証を示します。」
郷原弁護士「ここに総額が書いてあります。いくらですか?」
N「3億7千万円。」
郷原弁護士「それだけの大金を金融機関から借りたのですね。」
関内検事「異議。それには銀行以外の借入も含まれています。」
郷原弁護士「億を超える金額の大部分は不正融資で引き出したものですね?」
N「はい。」

郷原弁護士「いったい、どんな手口で融資を?」
N「まず、架空工事を発注したように契約書を作ります。名義や文書を偽造して融資の担当者に見せます。」
郷原弁護士「可児市の公印も偽造していますよね。ハンコはどうしました?」
N「ハンコは作りました。ネットで業者に依頼して偽造しました。」

郷原弁護士「詐欺の責任はどうやって取ろうと考えていますか?」
N「返済して償っていきたいと思っています。」
郷原弁護士「いま返済していくあてはありますか?」
N「あてはないです。」
郷原弁護士「贈賄の自白をした時、弁償する計画はありましたか?」
N「できないです。」
郷原弁護士「詐欺の責任、具体的には刑罰についてどう考えていましたか?」
N「そこまで考えてないです。件数は多い。数億円になると認識していました。」

郷原弁護士「あなたは、詐欺事件で2回逮捕されている。その頃、弁護人が替わりましたね?」
関内検事「その頃とは?」
鵜飼裁判長「異議と言って下さい。」
郷原弁護士「2回目の詐欺を自白した時、弁護人は?」
N「6月頃、K弁護士に替わりました。」
郷原弁護士「弁護人に何年務めるか訊きましたか?」
関内検事「異議。」
郷原弁護士「異議の理由は?」
関内検事「弁護権の侵害です。」
郷原弁護士「本人がいいならいいでしょう。」
鵜飼裁判長「異議を却下します。」
郷原弁護士「どれくらい入ることになると思いましたか?」
N「詳しくはしていません。弁護士さんからは長くなるとだけ。深く考えなかったです。」

郷原弁護士「昨日、すべて話して償いたい、とおっしゃった。その後はどうしていく?」
N「実家の手伝いで返済に回そうと考えています。」
郷原弁護士「どんな仕事?」
N「訪問介護です。」
郷原弁護士「ヘルパーですか?」
N「いえ、経営で。」
郷原弁護士「経営?ふーん、そうですか。」

郷原弁護士「執行猶予の可能性はあると思ってましたか?」
N「ありました。」
郷原弁護士「それは弁護士か検事に聞いて?」
N「留置場の人に聞きました。初犯だし。起訴される前は執行猶予の可能性も考えていました。」

郷原弁護士「あなたにとって賄賂はどんな意味?」
N「私のお願いを聞いて下さったお礼と今後もよろしくお願いしますの意味を込めて贈るものです。」

郷原弁護士「最初から賄賂と認識していましたか?」
N「賄賂という認識はその時なかったです。」
郷原弁護士「1回目逮捕された時、賄賂じゃないと思っていた?」
N「わいろという言葉でなく、悪いものとは思っていました。取り調べで全部吐けと言われて、これも罪になるということを知りました。」

郷原弁護士「当時、藤井さんは市議でした。市議にお金を渡すことは犯罪になると思っていましたか?」
N「いえ、全部犯罪ではないと思います。表でなく裏でお金を渡すのが犯罪だと思います。」
郷原弁護士「東京都知事の猪瀬さんが5000万円で辞任したニュースを聞いたことがあると思いますが、首長にお金を渡すのと市議に渡すのとは意味が違うとは思いませんでしたか?」
N「わかりません。」
郷原弁護士「最初から犯罪と思ってお金を渡しましたのですか?」
N「はい。それもあります。」
郷原弁護士「何が?」
N「それもありますし、刑事さんからこれも罪になると聞かされ、ゼロになって罪を償おうと。」

郷原弁護士「あなた、過去に横領事件を起こしていますよね?」
関内検事「異議。本件と関連性がありません。」
N「はい。以前勤めていた病院の事務長だった時にありました。」
郷原弁護士「いつのことですか?」
N「平成17年から24年です。」
郷原弁護士「途中で発覚してやめましたよね。その弁償は?」
N「はい。一部返済し、分割払いすることになりました。」
郷原弁護士「クビにはならなかった?」
N「はい。」
郷原弁護士「病院の事務長と水源の社長を兼務していた?」
N「はい。」
郷原弁護士「その後、横領は?」
N「はい。しました。」
郷原弁護士「2回目の横領の額は?」
N「1億5千万円。」
郷原弁護士「横領したお金の使い道は?」
N「個人的な借金の返済。キャバクラやパブの飲み代に使いました。」
郷原弁護士「年間ではいくらぐらい?」
N「年単位では5,6千万円。」
郷原弁護士「横領事件の結末は?」
N「民事裁判を起こされ、最終的に和解しました。」
郷原弁護士「和解の条件は?」
N「月々5万円と定期的に支払う分を返済に充てるという条件で和解しました。」
郷原弁護士「それで許してもらった?横領も立派な犯罪だよね。」
N「はい。」

郷原弁護士「贈賄の自白を始めた経緯についてお聞きします。中村署で取られた今年3月16日の調書と3月17日の調書について、当時の記憶をたどってもらいます。一番初めに贈賄のことを話したのは?」
N「3月15日に初めて自白しました。刑事さんに図を書いてくれと頼まれ、3月17日に図を書きました。」
郷原弁護士「3月16日と3月17日の調書で違いはありますか?」
N「16日の内容に付け足しました。17日は「今後もよろしく。」を加えました。」
郷原弁護士「具体的な内容は?」
N「店と金額は覚えていました。」
郷原弁護士「時期は?」
N「市長選の前と。」
郷原弁護士「供述当時、覚えていたのは藤井さん関連はそれだけですか?」
N「お店で20万円渡したことと市長選出馬の話だけです。」
郷原弁護士「ガストの10万円は?」
N「思い出さない。」
郷原弁護士「思い出さない?」
N「はっきりしない、と言いました。」
郷原弁護士「ガストの件は、取調中いつごろ?」
N「2、3日ころです。最初、10万円渡したと思い出しました。中村市議に10万円渡した。そうだ。藤井さんにも10万円渡したと。」

郷原弁護士「3月16日の取調べで20万円の供述をしていた時は、10万円のことは忘れていた?」
N「渡したけど、金額までははっきりしていませんでした。」
N「日にちとかはまだ思い出せていませんでした。ガストで10万円だけ思い出しました。」
郷原弁護士「他の具体的な状況や場面は?」
N「刑事さんとの話の中で、いったん整理しようと。まずはガストで10万円。その後、順番に一つ一つ思い出していきました。メールや資料を見せてもらって日付とか思い出しました。」
郷原弁護士「資料とメール?」
N「はい。メールの文面を見てガストに行ったことを思い出しました。」
郷原弁護士「資料とは?」
N「銀行口座の動きとかの資料です。」
郷原弁護士「それで全部思い出した?」
N「いえ、そうではなくて、資料を見せてくれなかったので。」
郷原弁護士「資料を見せてくれなかった?」
N「しっかり、手元で見せてくれませんでした。」
郷原弁護士「警察にメールや資料を見せられて供述をしたと?」
N「こうだったんじゃないかなと抽象的に話していました。」
郷原弁護士「警察にこうじゃないか、ああじゃないか、という風な訊き方をされましたか?」
N「はっきりしてるところとしてないところを調書に取られました。」
郷原弁護士「抽象的なところも調書に取られた?」
N「いえ、違います。」
郷原弁護士「はっきりしてないのに、はっきりしてると調書には書かれてしまった?」
N「いえ、それはないです。そうではなかったです。」
郷原弁護士「どういう風だったんですか?」
N「調書を見ながら、場面を少しずつ思い出していきました。」
郷原弁護士「調書を後で読ませてもらって確認しましたか?」
N「読みました。だけど、細かくはチェックしていませんでした。意識して読んでいませんでした。」

郷原弁護士「昨日、贈賄のことを話すのは一大決心だと話しましたね。」
N「はい。」
郷原弁護士「検察官の取り調べの時には、はっきりしてないことがあると言いましたか?」
N「渡した金額とかは話しましたが、メールとかは送ったかはっきりしないので、私の言い回しはどうだったかわかりません。」
郷原弁護士「金額以外はどうでもよかった?」
関内検事「そうは言ってません。」
N「いえ、抽象的なところはどう言ったか、特に注意していませんでした。」

郷原弁護士「3月22日の取り調べについてお聞きします。自動車も賄賂になるという話を警察としましたか?」
N「Tさんが藤井さんの車を用意というのも賄賂だと刑事さんは話してました。」
郷原弁護士「正確な言い方は?」
N「「藤井君が市長になったら運転できない。僕が運転するから車を用意して。」とTさんが話していました。それも賄賂になると言われました。」
郷原弁護士「自動車のことは藤井さんには話していない?」
N「はい。」
郷原弁護士「他に車の話はしましたか?」
N「H・Yさんに車の用意をお願いしたと話しました。」
郷原弁護士「検察官からH・Yがこう言ってると聞かされませんでしたか?」
N「いえ、言われてないです。」

郷原弁護士「H・Yから50万円借りたとのことですが、H・Yさんはあなたが全額藤井さん渡したと思っていましたか?」
N「H・Yさんは藤井さんに50万円全部渡したと思っていると思います。」
郷原弁護士「検察官は50万円のこと、どうしたか言ってきましたか?」
関内検事「私は言ってません。」
鵜飼裁判長「異議は裁判所に対してお願いします。」
N「いえ、私の方で、検事さんに話して確認してもらいました。」
郷原弁護士「どういう供述しているかと検察官に聞かされたのはいつ?」
N「起訴前も、起訴後もありません。」
郷原弁護士「検察官に対して初めて贈賄の供述をしたのは?」
N「4月中旬です。」
郷原弁護士「取り調べ回数は?」
N「10回です。」
郷原弁護士「4月2日と4月25日に供述してますね。一番、時間をかけたのはどの日?」
N「・・・」
郷原弁護士「3月27日の取り調べで、検察官から何か説明はありましたか?」
N「いえ、聞いてないです。検事さんから「はっきりしているところとしないところを分けろ。」と言われて整理しました。」
郷原弁護士「話した内容が正しいか事実と違うかは聞かれませんでしたか?」
N「聞かれませんでした。」
郷原弁護士「3月27日の調書は後の5月1日の調書と違ってますよね。」
N「はい。どこかはすぐに答えられません。」

郷原弁護士「ガストにいた人数について。あなた、3月27日の調書では2人と答えてましたが、5月1日の調書では3人と変遷してるんですよね。警察から、Tさんがいたかいなかったかどっちか聞かれませんでした?」
N「3月27日は刑事さんにTさんがいなかったとは断定しませんでした。まあ、いいかと。2人でもいいかと思って調書に署名しました。」
郷原弁護士「5月1日に調書取られた時、同席者Tさんの有無は聞かれませんでしたか?」
N「検事さんとの取調中にTさんも同席していたことを思い出しました。」

郷原弁護士「ガストに行った目的について。3月27日の調書にはどう書かれていましたか?」
N「覚えていません。お金を渡すとだけ。」
郷原弁護士「渡し方は?」
N「はっきりと思い出せてません。資料でカモフラージュしたとだけ。」
郷原弁護士「クリアファイルに封筒を挟んだと答えていました?」
N「違います。大きな封筒を使ったと答えました。位置がどうかとかそこまでは。」
郷原弁護士「最初は店の外の駐車場で渡そうと計画していました。どういう渡し方だったと?」
N「その時も、資料にカモフラージュと。」
郷原弁護士「現金を相手に見せなくても渡そうと?」
N「いえ、ちゃんと藤井さんに確認してもらおうと。」
郷原弁護士「では、3月27日の時はどんな風にして現金を持って行ったと?」
N「クリアファイルに挟んだ現金を封筒に入れてカバンに入れて持って行ったと。」
郷原弁護士「渡した場面は?」
N「具体的な場面は覚えてないです。」
郷原弁護士「でもね、あなた。3月27日の調書には具体的な場面が記載してあるんですよ。どうですか?」
N「覚えてません。」
郷原弁護士「3月27日の調書では「これ足しにして下さい。」と言ったことになってますね。」
N「刑事さんから、そういう風に言われて、そういう言い方したんじゃないかなあ、と思って。」
郷原弁護士「同じく調書ではね。藤井さんは「すみません。」と言ったことになってる。」
N「はい。言ったと思います。」
郷原弁護士「ということは、あなたは自分の言葉ははっきり覚えていないけど、藤井さんの言葉は覚えていると?」
関内検事「異議。誤導です。」
N「「資料です。」と私は言いました。それを刑事さんに「足しにして下さい。」と書かれました。」

郷原弁護士「もう一度、3月27日の調書について。現金を渡すのが目的だった。資料はどうでもよかった。前回の華川と同じものでもよかった?」
N「いえ、はっきり何を渡したかは覚えていませんでした。華川と同じ資料を持って行ってもおかしくないですね、と刑事さんには話しました。」
N「要はカモフラージュ。何でも良いと思ったはずなので、華川の資料でもおかしくないと刑事さんに話しました。そうしたら、調書では断定的に書かれました。」
郷原弁護士「刑事に断定的に書かれたことを気づいていなかった?」
N「はい。すみません。」

郷原弁護士「3月27日の調書にはね。「藤井はいとも簡単に金を受け取った。」と書かれてる。これあなたの感想?」
N「刑事に聞かれて、そう言ったかもしれませんが、覚えていません。正直、覚えていません。」

郷原弁護士「Tさんの同席について。取り調べの中で、いつ思い出しましたか?」
N「検事さんの取り調べの前にTさんのことを思い出しました。」
郷原弁護士「最初にTさんのことを話した相手は?警察?検察?」
N「刑事さんに話しました。」
郷原弁護士「どんな時?どうやって?」
N「刑事さんにメールを見せられた時に思い出しました。」

郷原弁護士「そうすると、話、全然違うよね。現金を渡すのが目的。資料はどうでもよい。だが、Tさんには知られたくない。では、なぜTさんを連れて行ったの?」
N「刑事さんに説明しませんでした。」

郷原弁護士「Tさんも一緒に連れて行ったなら、その日は現金を渡さなかったのだろうと思ったことは?」
N「ないです。」
郷原弁護士「警察に何でTさんを連れて行ったか聞かれましたか?」
N「聞かれませんでした。Tさんにばれても支障はない。渡せると話していました。店内に入っても席を外した時に渡せばいいやと。」
郷原弁護士「3月27日の供述時にそう思ったと?」
N「いえ、そうなるだろうなと。最悪、Tさんなので。」
郷原弁護士「Tさんに知られないようにする手口は思い出していない?」
N「一番最初は、そうでした。」
郷原弁護士「Tさんの同席を思い出したのは、いつ?」
N「4月中旬。3月下旬から4月上旬。Tさんのいたことを思い出し、その後、資料を見せられてひとつひとつ思い出しました。」
郷原弁護士「3月27日に調書に署名する時に、訂正する機会がありましたが、どうして訂正しなかったのですか?」
N「刑事さんにこの点を説明してもらいませんでした。」
郷原弁護士「4月に検察官の取調べの時も訂正しませんでしたか?」
N「わかりません。」
郷原弁護士「4月の検察官の取調べ開始時にの説明はどうでしたか?」
N「説明はありませんでした。藤井さんの件で聞きたいことがあると。」
郷原弁護士「3月27日にはじめて警察にしゃべった内容は4月の検察官の取り調べでは話題にならなかった?」
N「話題にしませんでした。」

郷原弁護士「Tさんが1人でドリンクバーに立ったと話したのは、贈賄容疑での逮捕前、逮捕後?」
N「いつ思い出したのかははっきりしません。話したのは逮捕前です。」

郷原弁護士「Tさんから藤井さんの呼び方は?」
N「Tさんは藤井君と呼んでいました。」

郷原弁護士「他の機会に、Tさんが他人のドリンクを取りに行ってくれたことは?」
N「他の時もTさんが取ってくれました。私の分も取ってくれたことがあります。」

郷原弁護士「4月2日ガストでの昼食の時間はどれくらいでしたか?」
N「1時間くらいでした。」
郷原弁護士「Tさんが席を外す機会はどういう場合が考えられますか?」
N「トイレか電話だと思います。」
郷原弁護士「過去、会食中にTさんがトイレに立ったことはありますか?」
N「あったかどうか記憶にないです。」
郷原弁護士「Tさんが「僕はトイレ行かない人間だ。」と話してるのを聞いたことはありませんか?」
N「分からないです。」
郷原弁護士「電話がかかるのは偶然ですよね?」
N「そこは深く考えてませんでした。」
郷原弁護士「となると、Tさんが席を外すタイミングは分からない。席を外さなかったらどうしてた?」
N「そこも考えてませんでした。」

郷原弁護士「ガストに行く前に資料を作成しましたね。作成時間は?」
N「1時間ちょっとくらいだったと思います。」
郷原弁護士「あなた、パソコンの打ち込みはかな入力?」
N「かな入力です。」
郷原弁護士「では、打ち込みのスピードは遅い方ですか?」
N「いえ、普通だと思います。違和感ないと思います。」

郷原弁護士「あなた、ガストから帰った後、藤井さんから「今日はわざわざありがとうございました。」というメールをもらったと思うけど、このメールの意味はどう思った?」
N「お金のことかなと。」
郷原弁護士「その後のメールで、藤井さんからあなたに「市民のため、日本のため、頑張ります。」と送ってるんだよね。この意味は?」
N「意味が分からないです。」

郷原弁護士「藤井さんの初対面について。はじめ警察には華川で初めて会ったと供述してたけど、実際には木曽路だった?」
N「はい。」
郷原弁護士「藤井さんの初対面の印象は?」
N「若くてさわやかな好青年。政治家っぽくないと思いました。」

郷原弁護士「藤井さんは浄水プラントが災害に役立つと話していた?」
N「それも思いました。」
郷原弁護士「あなたに頼まれたのでなく、浄水プラントの性能を評価して、市民のためになると思って導入しようと思ったのでは?」
N「そこまで考えてませんでした。評価はうれしいですけど、私からも動いてお願いしないといけないと思いました。」
郷原弁護士「政治家の中にはお金を嫌う人もいますよね。どうして、藤井さんにお金を渡そうと思いましたか?」
N「華川で話している時に、藤井さんが「議員は給料安い。」と話していたもので。」
郷原弁護士「それはTさんが話していたことでは?」
N「・・・」
郷原弁護士「藤井さんはそう言ってないでしょ?」
N「藤井さんは言っていませんでした。」

郷原弁護士「メールの文面「市民のため、日本のため」は額面通り受け取るのが普通では?」
N「私はもうお金を渡したので、そんな意味とは思いませんでした。」
郷原弁護士「もしガストでお金を受け取らなかったら、どうしてた?」
N「そこまで考えていませんでした。」
郷原弁護士「いくら議員が給料安いといっても、裏金を受け取るとは限りませんよね?」
N「私の持論ですけど、お金を受け取る議員と受け取らない議員がいると。藤井さんは受け取る方だと。」
郷原弁護士「その理由は?」
N「プライベートな食事ができる方ですし、大金、100万、200万の話ができる方だと。私の中で。」
郷原弁護士「食事といっても、毎回、昼食ですよね。それで藤井さんが受け取る方だと?」
N「はい。」

郷原弁護士「ガストの座席について。あなたが座っていたテーブル席とドリンクバーとの距離はどんなものでしたか?」
N「3,4メートルくらいだったと思います。」
郷原弁護士「甲85号証の見取り図と弁35号証の写真を示します。」
(モニタに現場見取り図と写真。)
ガスト受け渡し位置

郷原弁護士「ドリンクバーからTさんに見えているかもと思わなかった?」
N「はい。見えているかもと思いました。」
郷原弁護士「この位置でTさんに知られないように渡すのは?」
N「できると思います。資料を渡すようにやれば。Tさんにはバレないと。問題ないと。」
郷原弁護士「何か渡したかTさんに見つかったら、中身訊かれるよね?」
N「見つかっても、最悪、Tさんだから大丈夫と。いいやと。」
郷原弁護士「検察官の取り調べにもそう話しましたか?」
N「いえ、その時は言ってません。」
郷原弁護士「では、この裁判が始まってから話し始めたと?」
N「いえ、以前からそう思っていました。」
郷原弁護士「Tさんに見つかってもいいや、と検察官に話した?」
N「細かくは言ってません。」
郷原弁護士「そのことは調書にないよね?」
N「まあ、見られてもいいやと話しましたが、調書には書かれていませんでした。」

郷原弁護士「この裁判に証人として出廷する前、検察官と打ち合わせしましたか?」
N「はい。しました。相当回数。」
郷原弁護士「検察官との打ち合わせの中で、Tさんには見られたくなかったか訊かれましたか?」
N「訊かれました。」
郷原弁護士「証人出廷が決まってから検察官にはじめて訊かれた?」
N「いえ、でなくて。そうでなくて、逮捕からの半年間、何度も考えて整理させて欲しいと頼み、細かく思い出しました。」
郷原弁護士「検察官とは4月から5月にかけて10回取り調べを受けた。出廷前にも相当回数、打ち合わせをした。Tさんに分からないように現金を渡す手口はいつ思い出しましたか?」
N「いえ、Tさんがいたことは、検事さんの取り調べの前に思い出していました。5月の取り調べの時にも、Tさんがドリンクバーに立ったことを思い出しました。取り調べでもそう話しました。調書には書いていなかったです。」
郷原弁護士「Tさんにはバレても仕方ないと話しました?」
N「そういう言い方をしたかは分かりませんけど、最悪、Tさんならいいやという言い方をしたと思います。」

郷原弁護士「資金関係について訊きたいと思います。ガストに10万円持って行く前に、Yさんから15万円借りたということだけども、クレジットカード停止してたよね。4月10日?」
N「そこまで覚えていません。」
郷原弁護士「普段からクレジットカード使ってますよね。コンビニの決済も。」
N「はい。」
郷原弁護士「この当時、手元に持ってた現金は?」
N「5万から10万円ありました。」
郷原弁護士「ほかに口座とかに残してなかったの?」
N「私は口座に現金を残さない習慣があるので、手元にあったのが全財産という状態でした。」
郷原弁護士「藤井さんに10万円渡したら、どうなると思ってた?」
N「手元になくなるなと。」
郷原弁護士「4月10日に50万円支払わないとクレジットカードが停止することになってた。どうやって払うつもりでいましたか?」
N「カードが止まることはよくあったので、今回も遅れるなあという程度。」
郷原弁護士「このままではブラックリストに載ってしまうと、Yさんに話しませんでしたか?」
N「Yさんには「ちょっと支払いの入り用がある。」と言ったら貸してくれました。」
郷原弁護士「そんな軽い言い方で貸してくれたの?」
N「はい。Yさんはいつも10万、15万は貸してくれます。」
郷原弁護士「美濃加茂市に浄水器の営業をかけてることはYさんに話してましたか?」
N「美濃加茂市にも水源の浄水器を進めてるとYさんに話しました。」
郷原弁護士「あなたとYさんはどんな付き合いですか?水源と利害関係、共同関係にあったんじゃないですか?」
N「いえ、ちょっと、分かりません。」

郷原弁護士「山家の件について。H・Yさんから50万円借りる約束をした時に、藤井さんに渡すものだと言った?」
N「はい。」
郷原弁護士「Yさんとの違いは?」
N「Yさんは堅い人なので、藤井さんに渡すとは言いませんでした。」
郷原弁護士「H・Yさんに使い道を言ったのは?」
N「H・Yさんは使う理由を言わないと貸してくれない人なので。」
郷原弁護士「藤井さんに50万円全額渡そうとは考えていなかった?実際には20万円だけ。H・Yさんにはウソを言ったことにならないか?」
N「過去も、借りる時に金額を上乗せで言ったことがあります。ごめんなさい。」
郷原弁護士「なんでH・Yさんには使い道を言ったのか?」
N「H・Yさんは後で使途を訊いてくる。「銀行の支払いで。」と適当にごまかしていると、あとで首しめるので、H・Yさんにはちゃんと言っておこうと。」

郷原弁護士「あなたの借金について。病院の使い込みの弁償がある。もう一つ、渋谷の会社で6500万円の負債がありますね。このうちあなたが使ったのは?」
N「900万円です。金利とかで。」
郷原弁護士「借用書はありますか?」
N「借用書はありましたが、口頭で金利が1割と決まっていました。」
郷原弁護士「トイチですか?」
N「月1割です。」
郷原弁護士「それ払わないとどうなりますか?」
N「ヤクザの追い込みが来ると思っていました。」

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